Edu-LABO BLOG

「臨床の学び舎おんせいげんご」の学びや教育関連のブログサイトです。養成校の学生さんや臨床のSTさんがちょっと踏み込んで聞きたい話題について書きこんでいます。

良さげなマイクやヘッドホンについて。

 音声について何か考えたりする必要がある時、その論点についてカタカナで表記したり、IPAで表記したりすることがある。そこから「○○が××になっていた」などと考えを伸ばすこともできるかもしれないが、カタカナにせよIPAにせよ、「音」を文字で表記する事には必ず限界がある。なんらかの文字に起こした時点で、その音のもつ曖昧な部分などが捨象され、その人の感覚・認識のカテゴリで型押しされることになる。普段でもある人には「か」と聞こえるがある人には「た」と聞こえることは簡単に起こりえる。時には「もと音声そのもの」からかけ離れてしまうことも起こりえる。

 

(特に気を付けたいのはIPAを覚えることに苦労するので、IPAですらすらと書けるようになると、音声はIPAで表記できると誤解してしまう。IPAを覚えるのはホント苦労するけど、あくまで特徴的な調音動態が参考になる

程度。IPAについてはまたどこかで。)

 

とにかく、カタカナやIPAなどに書き起こすのは第2段階。まずは、その「音」をそのまま、まるごと録音しておきましょってこと。その後にこれは○○とか××とか解釈を加えることがおススメ。

 

そこで、録音の機材についてだけども、当勉強会のYouTube Channelがありますので、そちらでも録音については動画を出していますので参考になればと。

 

【録音について】

あとでまとめて保存や音響分析などする場合は、PCと互換性が高い録音方法が良いと思います。PCで録音するならば一般的なPCマイクでもかなり良いができます。Wavesurferなどの分析ソフトやSound Engineなどの録音ソフトを使って録音します。

CLASSIC PRO ( クラシックプロ )  / CDM80U 卓上USBマイク

https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/173218/

 

持ち運びを考えるとICレコーダーも良いのですが、あとで音響分析(WavesurferやPraat)などを使用することを前提とするならば、「リニアPCM録音」というような「非圧縮録音:wav wave」での録音ができるモノを選ぶと良いです。普通のレコーダーよりは高いですが、そのまま音響分析ソフトで分析できますよ。

SONY ( ソニー )  / PCM-A10 リニアPCMレコーダー

https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/262391/

 

こだわれる人はDAWDigital Audio Workstationのブログなどを検索して高精度で音声を録音するのも良いと思います・・・高額で知識も技術もいりますが・・・。

2021年版】初心者にオススメのDAWソフトはどれ?「たくさんあってどれがいいの?」「何が違うの?」DTM初心者のためのやさしいガイド!【2021/04/02更新】  | DJ機材/PCDJ/電子ドラム/ミュージックハウスフレンズ

 

 

【聞く方】

これに関しては一押しは「ヘッドホン」です。それも「モニターヘッドホン」と呼ばれる類を使うことを強くお勧めします。せっかく録音したのに聞き逃してしまっては残念です。モニターヘッドホンは以下のサイトで。

CLASSIC PRO ( クラシックプロ )  / CPH7000 密閉型モニターヘッドホン

https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/25126/

 

「モニターヘッドホン」は一般的なヘッドホンと違って、録音に至極、忠実というヘッドホンです。一般的なヘッドホンはそのヘッドホン自体に「色気」があって、低音が強いとか奥行きがあるとか、再生される音にそのヘッドホンの色気が加算されます。そうなってしまうと録音した音と異なった印象を持ちかねないです。ですので、その人の音声にそのまま寄り添いたいのであれば「モニターヘッドホン」という類のヘッドホンがおススメです。上図のヘッドホン、安価ですけど評判はとても良いですよ。

 

とにかく、録音して聞ける環境と習慣を持つ事をお勧めします。

音響分析の方法についてはまた「おんせいげんごWorkshop」のほうにもお越しください。

onsei-gengo.jimdosite.com

 

古田

 

言語聴覚士国家試験 2項の形容詞述語??(第18回の午前45)

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どうして正解が1なんですか?と問われまして、述べてみました。

正しい解説なのかはわかりませんが、とにかく正解が1になるように模索した結果ですので、個人的な意見として参考にして下さいね。

 

まずは述語と項の関係について

 「文」というは、その人が目の前でも目の前でなくても、何らかの事物や事象について述べるために配列した語の並びと言えるでしょう。そして、そのなんかを述べることにおいて、結論というか、その文が結局、中心として何を述べようとしているのかを示しているのが「述語」といわれる部分です。その人が、その事物・事象の動きについて述べようとすれば「動詞」が述語として登場するだろうし、対象の程度や印象なんかを述べようとするのなら、この設問のような形容詞が述語となって登場してくることになる。

 述語が言いたいことの主旨であるわけですから、その文は、その述語の意味を成立させるために選ばれた語たちで構成されるべきだということになる。そのような観点から、文の中に並んでいる語のうち、述語の意味をまず成立させるために必須の素材となる語のことを「項」という。そして、その必須の素材をもう少し説明するために付け加えられているような語(例えば修飾語と呼べるような語)のことを「付加語句(付加詞)」という。以下の実際の例文で考えてみよう。

 

Ex1:

昨日の夜、仕事の帰りに〇〇で買った大きなケーキを子供たちが嬉しそうに分け分けして食べた。

 

 …という文があったとする。述語は「食べた」となるでしょう。そして、この熟語を成立させるためには何を?という情報は必須の情報になることは想像されます。探してみると「ケーキを」が該当する。では、他の語は項だろうか、付加語句だろうか。例えば、他の語を修飾する意味合いを持っているかという観点からみると…

 

 仕事の帰りに買った > ケーキ

 大きな > ケーキ

 嬉しそうに> 食べた。

 分け分けして > 食べた

 昨日の夜 > 過去時制を援護する語

 

このように見て、もとの文からこの修飾的な意味合いを持つ語を除いてみる。

 

Ex2:子供たちが ケーキを 食べた。

 

 そして、この「食べた(食べる)」という述語は、動物の動作であるため、何を?という情報のみならず、誰が(何が)に相当する情報も必要と考えられる。そのため、この「子供たちが」は、修飾的な意味合いを持つというよりは「食べる」という動作が求める項として、「ケーキを」と同質の役割で文中に存在すると考えられる。結果、この「食べる」を述語として持つ文の項は、「子供たちが」と「ケーキを」の2つとなる。つまり、「食べる」は2項動詞となる。

 

 このように「食べる」のような動物などの動作を示す語が述語にある場合、その動作主とその対象を項として求める2項述語となる場合が多い。「傷つける」、「噛みつく」など、また「見る」や「書く」なども含まれる。

 そして、「落ちる」や「光る」、「降る」などその動きが自然と起きるという意味合いを持つ語が述語である場合には、その動作主は存在せず、何が?を求めるのみとなるため、1項述語となる。他にも例えば、モノの受け渡しを表すような動詞が述語となる場合には、受け渡す人とモノ、そして受け渡される人が必要になる。そのため、3項述語となる。

 注意したいのは、自然な発話の文などにおいては、文脈や話者間でその話題について共通の理解があると、項であっても省略されている場合がある。例えば、2項述語の「食べる」でも「オムライス食べる~!!」、また3項述語の「あげる」も、「コレ、あげる☆」となっていることも少なくない。その場合でもその文の構成(認識?)の上では「私がオムライスを食べる」、「私がコレをあなたにあげる」という構造があっての文体である。共通の理解の上で話者間の心理的な距離などを配慮して省略が行われていると考える。つまり、そのような場合でも、その述語の項構造は保存されていると解釈される。

 

形容詞とは?形容詞述語とは?

 形容詞について『精選版 日本国語大辞典』より引用してみた。


③ 物事の状態、性質などを言い表す言葉。形容辞。

 

 つまり、形容詞を述語とする文とは、物事の状態、性質などを表そうとしている文ということになる。


問題の解説

選択肢1の形容詞述語「遅い」について

 選択肢1の形容詞述語「遅い」の意味について、「ある状態や現象が速度や効率など数値で示せるような変化を生じており、それがやや不十分(低値)で推移している状態を示す語」であるとして解釈してみる。そのような観点から、「遅い」を形容詞述語とする文には、速度や効率など数値で示せるような変化を生じている対象が項として存在する必要があると考える。

 

 1-1 (自車の前を走る) 車が 遅い
 1-2 (彼の) 作業が 遅い

 

 まず、文中の( )内は自然な文とするため記載しているが、すべて下線部に対する修飾語と解釈できるので付加語句となる。1-1では、形容詞述語「遅い」の意味は、対象の「車」には速度に換算して低い数値と言えるような動きがあるということを表現している、つまり、「車」という語が「遅い」という述語の意味を完成させる項の役割を担っている。1-2の形容詞述語「遅い」の意味は、「作業」に速度あるいは効率のような数値として低いと言えるような状態があり、それを表現している。つまり、「遅い」の意味を「作業」という語が項として存在することで完成させている。当然ではあるが、下段の1-3、1-4に示したようにそれぞれに( )内の付加語句が「遅い」の意味を受ける項となることは難しい。(※は文として不適合の印)

 

 1-3 ※自車の前を走る 遅い
 1-4 ※彼の 遅い


選択肢2、3、4、5の形容詞について

 比べて、選択肢2、3、4、5の形容詞は速度や効率のような数値で示せるような感覚ではない。言うなれば、誰かがその状況や事象について持つ印象を示しているといえないだろうか。どこか漠然としているというか、なんとも全体的であり、その形容詞の意味は対象についての主観的な印象という度合いが強い。そのため、何についてそう思っているのかなどの情報に加えて、誰があるいは何がそう思っているのかという情報も文中にあることで形容詞述語としての意味が成立する傾向がある。

 

 2-1 彼は けんかが 強い。
 3-1 彼は お化けが 怖い。
 4-1 車椅子は でこぼこ道が 不便だ。
 5-1 彼は 彼女が 好きだ。

 

たとえば、2-1について、「けんかが」だけを項として「けんかが強い」としても、やはり誰が?という情報がある方が「強い」の意味が明確になる。一方、「彼が」を項として「彼が強い」としても、なにが?を求めてしまう。
ついでに、この4種が1項で成立する場合も考えてみたが・・・

 

 2-2 プロレスラーは 強い。
 3-2 夜の学校は 怖い
 4-2 現金払いは 不便だ。
 5-2 Disney Landは 好きだ。
(選択肢5はちょっと難しかった。これでもやはりもう一つの項として誰が?を求めてしまう。)

 

 このように並べてみたが、この4つの形容詞述語での1項文を作るためには、助詞を「は」にしないと成立しない傾向がある。「は」は「が」に比べてトピック(主題)を表す。ここで言うなれば、だれもがそう思っているだろうから、という大衆の心理を暗黙の上で広げて、その上で「〇〇は」として成立している。つまり、その大衆心理を項のように内在させ、その上に「は」を伴って1項の形容詞述語文の形をしている。例えば、この1項の語彙に、そのような大衆心理を想像できない語彙を用いてみる。

 

 ・    K君は強い
 ・    アンパンマンは怖い

 

 このような例では、やはり形容詞述語の意味を十分に担っているとは言い難く、「K君はボクシングが強い」、「Sちゃんはアンパンマンが怖い」というように、もう1項を存在させた方が述語の意味が安定する。

 

 2-3 プロレスラーは けんかが 強い
 3-3 小学生は 夜の学校が 怖い
 4-3 最近の支払いは 現金払いが 不便だ
 5-3 日本人の多くは Disney Landが 好きだ。

 

 ちょっと選択肢4が気になるが・・・一応、この4種は2項の形容詞述語文と考えた方が無難なようだ。


あらためて選択肢1について

 では、改めて選択肢1に、もう一つ項を増設すること、つまり、「遅い」を2項の形容詞述語文とすることは可能だろうかと考えてみる。

 

 1-5 彼は 足が 遅い。
 1-6 彼は 作業が 遅い。

 

 こうすれば可能なようにみえる。しかし、この2文は以下のように変形してもほぼ同じ意味となる。

 

 1-7 彼の 足が 遅い。
 1-8 彼の 作業が 遅い。

 

 つまり、「遅い」という形容詞述語は、すでに項と呼べる語がある状態で、更に項を増やすように「〇〇は」などとしても、冷静になってみると、すでにある項への修飾語の意味合いを持っており、付加語句とも言える。
 また、前述したように「遅い」という語彙は速度や効率など数値化できそうな語彙との間でその意味を落ち着かせる。それゆえに、「彼」などの数値化できない語彙を項としようにも、いまいち、「遅い」の意味を成立させることに繋がらず、文中に「が」や「は」をつけて登場しても、すでに項として挙げている語彙を修飾する位置になってしまう。一般的な発言として「彼は遅い」という表現は、「彼が早い」とか「彼女は遅い」などと同様に使うことがある。しかし、それらは前述したような省略の部類で、元々「彼の〇〇が早い」とか「彼女の〇〇が遅い」である可能性が高い。つまり、対話者間で項となりえる〇〇が、すでに既知の情報として共有されているために省略した表現型の一種といえる。
 そのように考えると、「遅い」の形容詞熟語は、項として速度などの数値に換算できる状況や事象を求める傾向があり、それ以外は項として存在しにくいようである。つまり、選択肢1の「遅い」は1項の形容詞述語である場合が多いといえるのではないだろうか。

 

まとめ

2項の形容詞述語として用いられないのはどれか。
1.    遅い
2.    強い
3.    怖い
4.    不便だ
5.    好きだ

 

 この正解が1となるには、5つの形容詞の意味に着目して、項となるだろう要素を想像してみて、項として適格か否かを考える必要がある。とにかく、まずは項とは?付加語句とは?ということを押さえておく必要はあるでしょう。
 また、STテキストには書いてないけれど、形容詞には意味をもとにして分類できる「感情形容詞」と「属性形容詞」があるというのもこの際、押さえておいても良いかもしれない。ちなみに、「遅い」は属性形容詞、それ以外は感情形容詞だろうと思われます。


取り急ぎ、ここまで。

あくまでも個人的な意見として…


(古田)

簡易な聴覚補助装置(予算15,000円)

 

 

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 先日、勤務先の作業療法士さんが声を張り上げて、HDS-Rの検査をされていた。大きな声で「ここはどこですか?」・・・おばあちゃんは「ん?・・ようわからん」。聞こえているのか、聞こえていないのか、知能検査なのか、聴力検査なのか(笑) する方もされる方も四苦八苦。

 そこで兼ねてから作ってみようかなと思っていたセットを組んでみた。その名も「簡易聴力補助装置」。そのままや・・・。

 

掛かった金額は以下に。

(ケースは好みで良いと思いますので、加算していません。たしか1500円くらいの他で使っていたケースの再利用。)

 

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 一応、おじいちゃんおばあちゃんご自身が自分の音声をFeedbackしやすいように、こちら側用のピンマイクだけじゃなくて、そちら側用のピンマイクも入れています。単純に検査するだけなら、こちら側用のピンマイクだけでもいいと思うので、ピンマイク1本分の3980円、更に安くなりますね。ヘッドホンが写真と違うかもしれませんが、まぁ似たようなもんです。
 スマホをマイク代わりにしてとか、ICレコーダーの録音モニターを使って聞こえやすいようにとかも考えました。確かにね、そのほうがより簡易でPortableですね。でも、こういうアナログなマイクとヘッドホンという必要な部分だけ持っておいて、さっと装着するというのも楽な気がして。もちろん、アルコール消毒もしています。安価なので気楽ですよ。

 

〈気に入っている点〉

ピンマイク。

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 大きなマイクでも良いのですが邪魔だし重いし、見た目的にベッドサイドだと目立つ。ピンマイクだと服に装用できるから目立たない。自然な雰囲気が保てます。

 

マイクケーブルが妙に長い。

 3mあるんですね。片付けが面倒ですが、コードの長さを気にして妙な前傾姿勢にならなくていいのは助かります。自然な距離感を保ってお話しできるのは助かります。

 

簡単なイコライザーがわかりやすくついてる。

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 ミキサーに簡単なイコライザー(高音域と低音域の増減調整)がついているのも良い。聴力に完全に応じた調整まではできませんが、ちょっとでもよい聞こえに調整できるような気がしていいですね

 

〈気に入らない点〉
 ちょっとね、出力(あるいはマイクの感度)の上限でも、おじいちゃんおばあちゃんの難聴の方が勝つときがある。もちろん、健聴者が聞けば爆音(暴力)なんですけどね。この辺りは耳鼻科のお医者さんにモノ申されそうですけどね。そんな爆音でも「あ~、なんとか聞こえるよ(笑顔)」なんて状態になるんですよね。こういう機器って上限で使用するとやはりノイズが乗ってしまう。またヘッドホンも鳴らせる限界になってしまうような気がして、音質が心配(実測したわけではないけど・・・難聴の方に感想を聞かないといけませんが・・・)。つまり、機器の増幅力より加齢性難聴の方が高度な時があるのがちょっと残念。もちろん、それ用の機器を足せばいいんだけど・・・シンプルさに欠けるのね。
 あと、こういう機器を用いて楽しく高齢者と話ができるっていう風潮が病院や施設にないのが残念。これから個人的に多用することで雰囲気作りをしようと思うのですが、耳の聞こえないおじいちゃんおばあちゃんってそれだけで軽んじられて、Communication neglectみたいになっている。私もそれほどおじいちゃんおばあちゃんが好きなわけではないが、聴覚の不調は加齢で避けられないものだけど、簡易な機器でそれを補正できるとなれば、「言語聴覚」を標榜する資格としてはこの手段はありだと思う(勿論、できるならちゃんとした補聴器が推奨されるけど)。
 ましてや、言語性の検査をするのなら尚更ね。ちゃんと聞こえていないまま、〇〇テストで何点でしたってなるのね。健聴者にすれば高層ビル建築現場か電車の架橋下で受けたようなテストになるのかな。「聞こえへんねん!」、「なんで今そんなことするん?」、「いらんわ!そんなテスト!」・・・健聴者でもそんな環境で検査されればそう言うと思う。もしよければ、こういう機器でなくてもいいけど、被験者が高齢者の場合には聴力のこと、もう少し配慮すべきではとは思いますね。
 

その人と話すこと

 ちなみに、これを使ってお話しすると、驚くほど話をしてくれるおじいちゃんおばあちゃんがいる。昔はああだったとかこうだったとか。へぇ~、そんなこともあるんだぁと驚かされる。なんていうのかな、その人の底力?みたいなものに触れるような気がする。御飯が食べられたり、歩けたり、動けたり、そういうことも大切。でも、自分が生きてきた人生を語ること、今日この日について共に話すこと。それはいわゆるADLとしては大したカウントをされないけど、少なくとも私の人生においてそこに楽しさや喜びを感じることは、時に何よりも大きいこともあった。
 私はそれほどおじいちゃんおばあちゃんが好きなわけではないが、例えばこんな機器を通じていろんな話ができることを経験すると、「その人と話すこと」をもう少し大切にする風潮があってもといいよねと思う。

 

対数グラフって!? 【教えて!!西岡先生シリーズ①】

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質問!
西岡先生、あのですね、いまさらの質問なんですけどね、よく音響学や聴覚心理でグラフが載っているんですけど、この手のグラフって縦横の線が「碁盤の目」とちゃうじゃないですか。これってどういうことなんですか?

 


西岡先生
・・・という質問を受けまして、その根源となったグラフのひとつが右のこの子なんですが、STテキストの聴覚心理学のページに載っている臨界帯域幅のグラフね。

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横軸の100Hz→200Hz(増加は100)、200Hz→500Hz(増加は300)の目盛りの幅があまり変わらない。普通のグラフなら、増加が3倍違うなら、メモリの幅も3倍変わりますよね?しかしこのグラフは幅が全然等間隔でない。

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それに、100→200、1k→2k(kは×1000、三振じゃないです(#^^#))の幅は同じ。

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増加が10倍も違うのに幅が同じとはなんぞやと。こういったグラフを『対数グラフ』といいます。そして、その対数とは?を説明する前に、「指数」というのについて理解するのがおススメでございまして。

指数とは10²のような数字の右上に乗ってる小さい数字を指します。(この計算を累乗といいます。乗ってるねぇ(^_-)-☆)

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10²は10×10、つまり10を2回掛けますよということ。指数とは「この数字を○回掛けますよ!」の○回をその数字の肩に載せて示したもの。

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だから、10²は、10を2回掛けますよということ。10×10は100なので、10²=100と書ける。こうとも書ける。

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そして、この「ある数字」が10を何回掛けたものなの?について、つまり、(=指数)を求めるために使うものが対数なんです。

 

その計算式はlog₁₀100となります。これは、「大きい数字(100)は小さい数字(₁₀) を何回掛けたもの」という意味になり、log₁₀100=2という風に表します。厳密にいうとこの2が対数と呼ばれるわけです。

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察しが良い人はお気づきだと思いますが、指数と対数は全く同じものを指してるんですね。計算式が変わるだけで呼び方も変わってしまうわけです。

 

で、この対数が2→3、3→4と変わっていくとは、数は10²→10³、10³→10⁴と変わることになるわけで。つまり、対数としては2→3、3→4と変わっていくだけの小さい数の変化なのに、コレ、実は100→1000、1000→10000という大きな数の変化を示している・・・というわけです。つまり、対数で表すことで表立って見えている数値の変化はちょぼちょぼ一桁程度なのに、それが示している値の増加量は桁違いに爆増していくわけです。

 

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ちなみに、10を1回かけて10というのに違和感を持つかもしれませんが、3回で1000、2回で100の並びで1回は10と理解しておきましょう。また、指数が0になる、つまり10を0回かけるというのも、わけがわからないかもしれませんが、同様に順に考えて、3回で1000、2回で100、1回で10、0回で"1"と理解しておきましょう。

 

とにかく、対数で表されている数値の変化は一桁程度なのに、それが示している値の増加量は桁違いに爆増している状態を表現しているわけです。逆に言えば、大きな数字で表されるような莫大な変化をする現象を表す時に、この対数の方法を用いれば、その爆増を一桁程度のちょぼちょぼ数値で表すことができるというわけです。

 

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そして、それを表すグラフにおいても、対数で表さなければならないような数値の変化を起こす現象を考える時、律儀に普通の数字並びでグラフにしたとすると・・・こうなる( ;∀;)。

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たぶん、びよーんと横長のグラフにしてみても2000くらいまでの値しか見れない。すべてをびよよーーんと表したとしても、横軸が長くなりすぎて、縦幅の変化もほとんどないように見えてしまう。


グラフって、そもそも「変化量」をパッと見て分かりやすくするものなんですよ。これでは対象とする現象の変化について一応表してはいるのだけど、膨大な全体像を表すことに一生懸命になってしまって肝心の現象の変化が見えにくくなってしまう。対数でグラフにすると数値が小さくなるので狭い範囲で全体を表せるわけだけど、それは同時に全体で起きている変化を見やすくすることにもなるんです。

 

最後に、横軸をギュッとする意味は分かったけど、じゃあなぜグラフの目盛りを等間隔にしないのかってところなんですが、そこには対数計算のより細かい結果が絡んでいます・・・。


まず、繰り返し示しているように、この10と100がそれぞれ対数1、2をとるというのは、もうお分かりいただけますよね?。

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では、こういうのはいかがでしょうか?

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20ってそもそも10を何回かかけてできるものなのか???「10×2だから2でしょ?」ではないですよ。対数が2というのは10×10、つまり10を2回かけますよってことですから100のことになります。そういう意味で、300も決して10×30ではないですよ。10を何回か掛けたら300になるのか??ってことです。

 

以下に計算結果を載せます。

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実際にご自身でこの結果を導きだそうと思うと複雑な対数計算の知識が必要になってくるので割愛しますが、例えば、20は10を1.301…回かければできるそうです。なかなか想像しにくい世界観ですが、300は10を2.477…回かけるとできる。そういう見方です。

そして、対数でグラフを作るということは、対数の1と対数の2の間には、この細かい数値が並ぶことになるわけです。そして、その数値の間隔がだんだん狭くなってることに気が付くと思います。

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そして、この値をグラフの横軸に並べてみました。ここまでくると、対数グラフの目盛りがなぜ均等な配置にならないということが見えてきますね。

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そして、対象の数値(表の左端)の桁が増えても、その数値間の間隔は同じ幅になるんですよ。

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この間隔がいわゆる「対数」を軸に持ったグラフの目盛りが、等間隔でないという理由です。

 

 

次回にまた、なぜ対数を使ってグラフにするの?についてお話します。

以下はMel尺度のグラフを対数を用いたグラフと対数を用いないグラフです。グラフをこのように表現することの良い点と悪い点を解説したいと思います。

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解説:西岡

【再掲】音感覚と運動。

臨床の学び舎おんせいげんごのBLOG-Siteのほうで昔書いた記事なんだけど、昔は教育・研究分野の記事と勉強会の取り組みの記事を特に分けていなかったので・・・

今思えば、これはこのEdu‐LAVOブログのほうに載せておくべき内容だな~って記事とのリンクを貼っておこうと。


〈この記事のPOINT〉

 可動域制限や筋力低下などで運動が制限された時、その再調整に対象の筋?の運動トレーニングだけではちょっと片手不足な気がする。

 

以下のURLからどうぞ。

onsei-gengo.hatenablog.com

【再掲】インコがね、しゃべるんですよね・・・

臨床の学び舎おんせいげんごのBLOG-Siteのほうで昔書いた記事なんだけど、昔は教育・研究分野の記事と勉強会の取り組みの記事を特に分けていなかったので・・・

今思えば、これはこのEdu‐LAVOブログのほうに載せておくべき内容だな~って記事とのリンクを貼っておこうと。


〈この記事のPOINT〉

 インコがね、しゃべるんですよね・・・

 

以下のURLからどうぞ。

onsei-gengo.hatenablog.com

【再掲】音の高さの心理尺度「mel尺度」ね・・・

臨床の学び舎おんせいげんごのBLOG-Siteのほうで昔書いた記事なんだけど、昔は教育・研究分野の記事と勉強会の取り組みの記事を特に分けていなかったので・・・

今思えば、これはこのEdu‐LAVOブログのほうに載せておくべき内容だな~って記事とのリンクを貼っておこうと。


〈この記事のPOINT〉

「mel尺度」ってなんだか信用できない・・・そんな気持ちから書いたブログです。

 

以下のURLからどうぞ。

onsei-gengo.hatenablog.com