Edu-LABO BLOG

「臨床の学び舎おんせいげんご」の学びや教育関連のブログサイトです。養成校の学生さんや臨床のSTさんがちょっと踏み込んで聞きたい話題について書きこんでいます。

Phon、Soneって…。

等ラウドネス曲線とSone尺度

古田

学生さんから質問なんですが・・・
Sone尺度を測る際に、たとえば右耳に40Phon(1000Hz)の音を2つ同時に流し、左耳に入れた音が右耳と同じ大きさになれば、それは40Phonの2倍となる。つまり、それが2Sone(=50phon)。ここまでは合ってます?そして、学生さんからの質問は、その時の右耳の音は何デシベル?とのことでした。

西岡
40phonの音を2つ同時に流すと2音が加算された大きさになるのでは?という意図で差支えないですかね?おそらくではありますが2音の加算の場合、音圧(Pa)での計算となるため、音圧が2倍=約6dBの増加(音響学入門第1版p.44参照)、46dBになるかと思われます。

また、もう少し複雑な話となると2音が同位相でないと2倍にならないと思います。さらに、右左の聴力が異なる場合、また計算はややこしくなるかと思います。まとめますと「2音同時聴取は単純に2倍の大きさの感覚にならない」ですね。

じゃあ2倍(2sone)ってどうやって定義したってことですかね?
…わからないです(笑)のでちょっと調べてみてそれとなくそういうことを言ってそうな文献を見つけたので添付させていただきます。

 

『知っているようで知らないラウドネス』難波精一郎

 

結局は心理測定法でよく名前をうかがうスティーブンスさんが物理量と感覚量の関係をME法で測定して示したというところでしょうか。

付記:ME法
物理的な出来事に対する人の感覚を測定する方法のひとつ。マグニチュード測定法。ある刺激量に10とか適当に数値を持たせて、そこからの変化量に対する感覚の程度の増減を数字で表現する方法。2倍と感じたなら20とか、半分と感じたなら5とか。Soneはその代表例。
引用元:『心理物理測定法』 中野靖久 p25

 

古田
結局、等ラウドネス曲線、phonまでは地に足がついているけれど、sone,melあたりはかなり限局した実験結果んでしょうかね(^_^;)

何かに使われてますかね〜。phonは簡略されて?dBAを使わせている気がする。むしろ、個人的には等ラウドネス曲線、phonからのdBAで話が終わればよかったのにって思う。melは…もう説明も難しいかな(^_^;)
音の高さの物理的変化量と心理的な単位の違いは、単にピアノの平均律で、ラ以外が実は周波数が正しく2倍になっていないくらいで良いのではないかなと。

Mel尺度


今更なんやけど、心理量を数値にする必要ってある?

つまり、phonやdBAを超えて、人の感覚に寄り添ってみようとするとき、そこが数字である必要があるのか。なにかその「美しさ」を数値化する試みに近いような…。どか途中までは配色の比率とか、色使いのバラエティーとかを数値化できるかもしれないけど、最終的に「美しい」のは?となると、もう言語でしか表現できないような。

 

西岡
心理量を数値にする必要性についてですが、僕としてはあってもいいのかなと感じます。単純に数値で表された方がわかりやすいからですが(笑) 「心理量」という分かりにくいし全然まとまりがないものを、数値として表したいという探求心はわかる気がします。ただ、着地点がなくても無理やり着地させないといけないという圧力が美しさを汚しているのかなと感じます。
・・・なんてスケールの大きい話になってしまって申し訳ないです。

 

古田
確かに、わかりやすさや便利さという点からは求められる分野かぁ…。
ちょっと話がズレるけどね、ヒトの感覚の中では音を大きく感じる程度を数値化するのは比較的、扱いやすい刺激-感覚の関係かもしれないけど、他の刺激−感覚の数値化についてはどうだろうか。

例えば、痛みね。コレって数値化したりするのかなぁ。ランボー知ってる?90年代の映画。スタローン💪。奴の数値は桁外れだよ。

 

西岡
痛みの感覚の測定ができたらめちゃめちゃ実用性が高いですね。耐えられない痛みの閾値を10としてそれと比べてどれくらいの痛みかみたいな測り方になるんですかね。だれも被験者になりたがらなそうですが(笑)
ランボーは聞いたことしかないですが、スタローンはジャッキーチェンと共演していたので知っていますよ。ジャッキーチェンもスタローンに負けないくらい桁外れですよ!

 

古田
ジャッキーチェンね、いいよね〜(^^)
あの布屋根?の3段落ちのケガのシーンあるやん?首やばいヤツ。あの痛み度を10としたとき、いや、アレを10にしたら、なにが5になる?あのショッピングセンターの真ん中のポールを電球バリバリさせながら着地するシーンくらい?そう考えるとね、10とか0とか、あるいは5とかはなんとかできるけど、2とか7とか難しくない?

 

西岡
プロジェクトAの首やばいやつを10にしてしまったら大概の痛みが1以下とかになりそうですよ(笑)ジャッキーチェンですらトラウマになったくらいですから。確かに痛みが半分とか全くないとかはわかりそうなもんですけど、ちょうど5分の1の痛みとかよくわからないですね。
例えば針を刺して初めて痛いと思ったところを1、そこからどんどん深くしていって2倍、さらに2倍と感じるところの深さを測定していけば、相対的に3倍はこの深さ、7倍はこの深さみたいに中途半端な数字も出せるんじゃないですかね。ランボーとかジャッキーチェンが感じる感覚量基準にすると、一般人は意識飛ぶレベルになりそうですね(笑)

 

古田
いいね〜、針をグッグッで2、グッグッグッで3…
いや、誰が誰に?(^_^;) 怒られるね、完全に(笑)

でもさ、等ラウドネス曲線の90phonとかも近いよね。1000Hz90phonと同じ500Hzの…とかもう拷問だよね。医者さんがいたら止めてるわ(^_^;)

西岡
痛みで実験って誰も喜ばな…そういうご趣味の方は喜んで参加されることもあるかもしれませんね。もはや痛みの実験でなくなるかもしれませんが(笑)

確かに等ラウドネス曲線の上の方のphonはそうですね(笑)
騒音暴露覚悟でやってたんでしょうかね。

 

 

騒音と騒音計 | 騒音計・振動計のリオン株式会社

 

古田
いやはや、面白くお話が続いております(^^)
ちなみになんですが、にしおかせんせい的に、phonは心理尺度?物理尺度?

等ラウドネス曲線


西岡
そのご質問をされるまでは心理尺度と考えていましたが、よくよく考えてみると非常に微妙ですね。
1000Hzにおいては物理尺度と言ってしまうような気もします。他の周波数は心理尺度と言っていいような気がするんですが…これ絶妙ですね(笑)

 

古田
そうなんですよ。
なんだかそういう気持ちになりました。確かに1000Hzは心理尺度とは言えたもんじゃないですね…(^_^;)

もとい、1000Hz基準で良かったんでしょうか…。他の周波数を基準にした場合、どうなったと思います?例えば、100Hzを基準とした場合とか(^^)

 

西岡
100Hzを基準にした場合…というのは100Hzの最小可聴音圧を0dBSPLにした場合ですかね?

 

古田
100HzのdBSPL値を基準にして、それと同じ大きさと感じる各周波数を計測する…あ、だいぶ高いdB値からスタートになるか(笑) ほな、1000Hzを基準にしたのは、dB値がまんべんなく取れるから?ヒトと1000Hzの癒着が気になってね(^_^;)

 

西岡
そうですね。他の周波数がめちゃめちゃマイナスになると思います(笑)
確かに1000Hzが基準の理由ってなんなんでしょうね。言語に関わりやすい周波数かとか「ド」の周波数(中途半端なドですが)だからとか考えてはみますが、いまいちしっくりこないですね。

 

(いったんここまで)

 

Bekesyの自記オージオメトリーって…

迷える学生さんからの質問!

Bekesyの自記オージオメトリーって、持続音と断続音で検査して、ああいう分類(Jerger分類)をするんですけど、そもそも持続音と断続音でなんでそんな差が出ちゃうんですか?例えば、なんで後迷路性だと閾値が上昇することになるのでしょうか?よろしくお願いします。

自記オージオメトリについて、詳細は末尾の参考文献にも挙げています村井和夫氏の論文『自記オージオメトリ』をどうぞ。以下に概要のみ引用。

概要:
1947年、Bekesyによって考案製作された自記オージオメータ(Self-recording audiometer)は、Bekesy型オージオメータとも呼ばれ、臨床または聴覚生理研究の分野で広く利用され、臨床検査法として確立し今日に至っている。
本検査法の特徴は検査音を被験者に聞かせながら閾値を自動的に測定できることであり、また記録された鋸歯状の波形および振幅などから補充現象の有無の測定あるいは感音難聴の細別診断に極めて有力な情報を与えてくれる。


西岡
とてもいい疑問を持ちますねー。
一過性閾値上昇が持続音で生じる理由ですが、結論から申すといまだにその理由は解明されていません。詳しくは村井氏の論文を参照いただきたいですが、その5ページの「一過性閾値上昇」の項目をみていただけると・・・

 

「この現象の出現の機構は音を聞き続ける能力の障害であろうと考えられているが、後迷路性感覚経路のどの部位がどのような病変によってこの現象が起こるかについては未だにわかっていない」

 

・・・とのことです。人によっては断続音でも一過性閾値上昇が起こる方もいるみたいですね。

僕が自記オージオについてお伝えするときはイメージとして、断続音のように定期的に刺激がくるような音は刺激の度に反応が促されるけども持続音のように同じ刺激がずっと続くと聴こえているのか聞こえていないのかわからなくなってくると説明します。

同じトーンでずっと話し続ける人の話は眠たくなりませんか?それと似たイメージですね。神経や中枢にダメージがある人だとそれが起こりやすいわけですね。

 

【参考文献】
村井和夫 自記オージオメトリ:Audiology Japan 50, 165. 173, 2007
https://www.jstage.jst.go.jp/article/audiology1968/50/3/50_3_165/_pdf

 

言語聴覚士国家試験 第8回問題83について

古田

この問題、きれいな解説は対数計算が必要でしょうか?解説をお願いできませんか?

 


西岡

第8回問題83ですか・・・

確かに本来は対数計算が必要ですが、dBSPLではなくdBILでの対数計算が必要になり、ちょっと頭がこんがらがるとおもしろくないので、とりあえずは対数計算なしで解く方法をお伝えいたします。

音の強さと音圧レベルの関係は、音の強さが10倍になると音圧レベルが+10dBという関係性があります。(「言語聴覚士の音響学入門」p.39に記載)。

 


 問題文は「音の強さ」を10倍なので、40dBSPL+10dBSPL=50dBSPLとなります。なので、この問題は1000Hzの「40dBSPL」と「50dBSPL」の間での大きさの関係についてSoneで求めているんだなとなります。ソーン尺度はSTテキストの『聴覚心理学』の項に載っております以下のグラフのことです。

 

 

ソーン尺度は10phon上昇するごとに音の大きさが2倍になるという法則があります。

そこで、1000Hzの40dBSPLと50dBSPLはPhonだとどうなるのか?となります。そこで等ラウドネス曲線を思い出します。

 


小野測器様のHPより引用。

 

これも実はわかりやすい数値なんです。1000Hzの40dBSPLは40Phonで、1000Hzの50dBSPLは50phonのことなんです。それを踏まえて、前掲のSoneのグラフの40Phonと50Phonのところをみれば40phonに対して50Phonは2ソーンの関係だとわかる。

そして、答えは約2倍の2ソーンとなるわけです。いかがでしょう??

 


古田

いやぁ、ありがとうございます。この問題は等ラウドネス曲線やPhonとSoneの関係の基本を知っていれば解ける問題なんですね。確かに。ただ問題文だけからこのグラフの記憶までたどり着けるかどうか…( ;∀;) わかれば簡単、わからないと難問って感じですね。

そしてね、この「音圧」と「強さ」って存在とか、それらの関係とか・・・う~ん、そのあたりを計算式で理解したい学生さんもいらっしゃいますよね。ただ私はもホント苦手とするところで・・・( ;∀;)

 

西岡
それはそれは(^^)
個人的には面白いところですが、なかなか苦手な印象を持つ方が多いですね。う~ん、とはいえWordやBlogの形式での計算式の説明もなかなか…。

 


西岡&古田
では、その辺りについて「西岡&古田の対談」形式で語りましょう!

下段のようなラジオ番組みたいなYouTube動画を企画しますので、「臨床の学び舎おんせいげんご」のYouTube Channelにて近日公開ということで。

 



音響分析ソフトの使い方のYoutube

先日、「臨床の学び舎おんせいげんご」のYoutube Channelを刷新しました。

内容は今まで通り音響分析ソフトWavesurferの使い方ですが、以前の動画をトピックごとに短くして、パッと見終われるようにしました。

相変わらずPowerpointのスライドを動画化しただけのものです。今回はBGMをつけていませんので、お好きな音楽など流しながら、あるいは分析対象の音声を分析しながら、動画をチラチラ参照してくださったらと思います。

 

www.youtube.com